「思考のロードマップ」で情報を見極める
もしも、あなたがブログやSNSで情報発信する側なら、嘘やデマを流すわけにはいきませんよね?また情報を受け取る側でも、間違いのない情報を取り入れたいでしょう。
心に免疫機能はありません。
人は心理のスキを刺激されると、嘘やデマですら簡単に信じ込んでしまいます。
「知ってる?同僚の●●さんって、20代の子と不倫してるんだよ。」と言われたら、よっぽどの否定材料が無い限り「えっ…そうなの?」と納得しそうですよね。
これまでの5ページで証明した通りネガティブな情報は広がりやすく、また信じ込みやすいからです。人の心理とは、それほど無防備なのです。
では、嘘やデマを見極める方法はあるのでしょうか?
はい。
実は、誰でも出来る方法があります。
それが「思考のロードマップ」です。
思考のロードマップとは?
やることは簡単です。
「それは実験が可能なのか?」と考える。それだけです。
(例1)「スマホの5Gは脳を壊す」は本当か?
研究者が無作為に人を集め、スマホ漬けの日々を過ごすAグループとまったくスマホを扱わないBグループに分けることは可能でしょうか?それが可能だとして、実験期間は何週間でしょうか?そして1番の問題は、実験の結果 脳を壊されたグループの人たちはどうなるのでしょう?つまり倫理的な問題があるので、実験は不可能です。
(例2)「ダイエットするとハゲる」は本当か?
例1と同じように人を集め、ダイエットするAグループと普段通りに過ごすBグループに分けることは可能かもしれません。しかし「実験に参加したらハゲた!」と言われたら大問題です。つまり実験が行われていない可能性が高いです。
「実験不可能」ということは、研究が無い=データが無いということです。またデータが無い=根拠がないと判断できるので、情報を正しくふるい分けることが出来るようになります。
つまり「それってあなたの感想ですよね」という状態です。
もし難しいなら、以下の3つのポイントに注目してください。
「実験可能か?」を考える、たった3つのポイント
「それは実験が可能か?」を証明するのは、コツさえ分かれば非常にかんたんです。
おおまかに3つを意識してください。
- 人数が集まるか
- 一定の期間を確保できるか
- 倫理的に問題は無いか
※その他にも、経済的に可能か?そもそも情報の出どころは?などの判断基準もおすすめです。
ようするに無作為比較実験が可能か?(2ページ終わりで説明)と考えれば良いのです。
ためしに3つ、例を挙げます。
例1:セックスで若返る
例えば「セックスをすると若返る。セックスをするとセロトニンという幸せホルモンが出るので、体が若さを取り戻そうとする。」という意見があるとします。
さあ、「へぇ~」と納得する気持ちをおさえて「根拠となる研究はあるのか?」と考えてみましょう。
ポイントは3つです。
人数
まず、セックスによる若返り効果を証明するためには、当然 男女のつがいを観察しなければなりません。それも1~2組ていどのカップルではデータ不十分です。なので数10組のカップルを被験者としてピックアップすることになります。
期間
次に、若返ることの定義は何でしょう。見た目でしょうか?精神的にでしょうか?どちらにせよ「朝起きたら10歳若返った!」などありえない話なので、少なくとも年単位での追跡調査が必要です。つまり、なん10~100回も男女の夜の生活を観察することになります。しかも数10組。
倫理
最後に、セックス=若返り効果の因果関係を調べなければいけません。例えば被験者がセックスした後、実験室に呼んで脳波を調べる。またセロトニンの分泌量や一晩を過ごした時間、そして被験者がセックスにより若返りを体感できたか?についてのアンケートも必要かもしれません。
どうでしょう?
ざっと考えて、こんな研究は可能でしょうか。確かに数10組のカップルを集めることや、長期間の追跡調査までは出来るかもしれません。しかし、倫理的には問題視される可能性が高いので、研究はほぼ不可能であると考えるのが妥当です。
なので「セックスをすると若返る。」という意見は研究が不可能であり、データも無い。つまり根拠の無い意見であると言えます。
例2:ゲームが1番、少年犯罪を助長する
理屈っぽくなりすぎなので、ここは短くすすめます。
「ゲームが1番、少年犯罪を助長する」という意見。これはどうでしょう?
具体的な考え方は2ページでも説明しています。
よく聞くのは「ゲームは暴力的だから当然ダメでしょう」という論です。これはゲームをした場合のみの条件なので、そもそも比較テストにすらなっていないと考えられます。
つまりゲームと同等かそれ以上に暴力的な表現をしている媒体もあるので、それらと比較しなければデータとして成り立たないわけです。例えば、漫画を読んだ場合やアニメを見た場合。またオタク文化から離れて、小説、絵画、テレビなど。
もし本格的に実験をすると「1番犯罪を助長するのは報道である」という結論が出るかもしれませんよ?
例3:同僚の●●さんが不倫をしている
「同僚の●●さん」についての噂話。これはどこの職場でもあるデマ情報ですよね。
実験なんて不可能に決まってるでしょうか?
いいえ。
この場合は●●さんが職場で働いている期間を実験として考えればいいのです。
では、その話題が正しいか?間違いか?を考えてみます。
人数
まず人数。ここでは●●さん(被験者)ではなく、●●さんを観察するスタッフ(研究員)の数を考えます。参考までに私が3年前に勤務した病棟だと、2名のドクター、17人のナース、9人の看護助手、合わせて28名のスタッフがいました。
28名の内「●●さんが不倫している」と噂する人数は何人でしょう?1~2名だと信ぴょう性に欠けます。仮に9割以上が断言するなら、不倫の可能性は高いかもしれません。
期間
次に実験期間。●●さんは職場に何年在籍しているでしょう。仮に5年としたら、5年間は●●さんを観察していたことになります。
5年の内1度だけ不倫の噂が流れたなら、情報は慎重に扱う必要があるでしょう。裏を返せば、何度も不倫の噂が流れるなら信ぴょう性が高い情報であると考えられます。また●●さんの勤務態度、人間性、プライベートでの評価も実験期間中には観察できますね。
情報の公平性
最後に、情報の出どころ。そもそもの話、どこの誰が言い出したのか?なぜ不倫していると思ったのか?さらにその発言は公平な視点か?
注目するポイントは以下の3点です。まず発言者が2ページで述べたようなパターン化にはまっていないか?次に発想が飛躍していないか?最後に、単純な思考ではないか?と考えるわけです。
このように「その発言は公平な意見か?」と考えるのも良い手です。
当然ながら世の中全てのことが研究やデータで成り立っているわけではありません。また主観を完全に消すことも不可能です。
つまりその発言が、客観的で公平な意見であるかという考え方です。
裏を返せば、あなたが客観的で公平であるほど、権威ある意見者になれることでもあります。
思考のロードマップ=心の免疫機能
もし情報がウィルスや細菌なら、シャーレで培養したり電子顕微鏡で観察することもできるでしょう。2つのポジティブ細菌とネガティブ細菌を薄くスライスして、内部構造を調べたりも出来るかもしれません。
しかしそれはフィクションなので私たちは嘘やデマを信用してしまいます。
このページで紹介した「思考のロードマップ」とは、嘘やデマにダマされないための心の免疫機能です。
「それは研究が可能か?」と考えるだけなので、誰でも身に着けることが出来ます。
次の7ページでまとめます。
1ページでお話した「中田さんのパパ活疑惑」の結末もあるのでお楽しみに。
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